FC2ブログ

リハビリの世界の話を患者さんやそのご家族、またこれからリハビリに興味を持ちたいかたなど、リハビリの専門家ではないかたにも読んでいただけるようわかりやすいことばでブログにしてみました。趣味の話も少々。                    (旧タイトル・理学療法士板東蓮三郎の視点論点)

脳の中の役割分担

 私が初めてリハビリ助手として勤めた病院では、午前と午後、患者さんそれぞれのリハビリを開始する前に、全員で2曲、懐かしい歌やその季節に合った歌を歌い、その後「大きな栗の木の下で」を歌いながら身体を動かす体操をしてからリハビリを始めました。
 リハビリ助手の私にはよく歌の指導の役が回ってきました。
 そのころ接していた男性の脳卒中の患者さん(橋塚さん・仮名)のことがとても印象に残っています。
 橋塚さんは脳の広範囲にダメージを受け、失語症があって話をすることができません。それでも歌の時間には車いすに座ったままいつも楽しそうに首を振って参加しています。
 あるとき高齢の女性の患者さん4人と橋塚さんの5人という少人数を相手に「青い山脈」を歌っていたときのことです。
 橋塚さんは話せないので歌声は女性の声だけなはずでしたが、何となく男の人の歌声が聞こえたような気がしました。
「おかしいなあ。橋塚さんは話せないはずなのになあ。」と思ってその後、橋塚さんと2人だけでもう1度歌ってみました。
 するとメロディーをハミングするように歌った(うなった)あと「あお~い、あんあ~う~」と確かに歌っています。
 これは私にとって激しく感動させられた瞬間でした。

 学校の解剖学や生理学の時間に脳の機能局在(部位ごとの役割分担)について学び、運動中枢にダメージを受ければ運動麻痺が起こり、言語中枢にダメージを受ければ失語症が起きることは承知しているつもりでした。
 それで「橋塚さんは失語症だから歌えない。」と思いこんでいたのですが、言語中枢とは別の音楽を支配している中枢がダメージを受けていなかったために、子音などの正確な発音はできなくても、母音中心の粗大な口の動きをメロディーに乗せて歌うことができたんだとわかりました。

「こういうことのためにも音楽療法って大切なんだなあ。脳ってすごいなあ。」と認識を新たにさせられました。
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

URL
コメント

パスワード
秘密
管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURL : http://to4580.blog11.fc2.com/tb.php/1062-1f25cfa5
<< 読書① | TOP | 脳挫傷 >>