リハビリの世界の話を患者さんやそのご家族、またこれからリハビリに興味を持ちたいかたなど、リハビリの専門家ではないかたにも読んでいただけるようわかりやすいことばでブログにしてみました。趣味の話も少々。                    (旧タイトル・理学療法士板東蓮三郎の視点論点)

理学療法士と残業

 最近ではちょっとした病院にはリハビリテーションスタッフはかなりの人数がいるのがふつうになり、理学療法士だけで10人を超えるところも珍しくなくなりました。
 私が理学療法士になった四半世紀前には私が勤めていた総合病院でも私が2人目の理学療法士で、「もっと増やして」と申請を出しても「人件費がかかるから」と相手にしてもらえず3人目の理学療法士を採ってもらうまでに数年かかりました。
 当時の病院経営者は、リハビリは医療のおまけのようなもの、と考え大切とは思っていなかったのです。

 当時受付や医療事務を担当してくれていた女性スタッフが退職し、新たな事務職員を入れてもらおうとしても、「受付業務など理学療法士自身で仕事の片手間でもできるだろう、自分たちでやれ。」というスタンスで、新しいスタッフをまったく採用してもらえませんでした。
 その頃その病院のリハビリテーションスタッフは私以外は視覚に障害のあるかたばかりで、いきおい事務仕事は私の上にのしかかってきました。
 自分の担当している患者さんの治療(リハビリ訓練)をしながら、その合間で、来室した外来の患者さんの受付票を順番に受付処理し、それによって使う医療機器の順番等の段取りを考えて手配し、外来患者さんが終わるまでには会計伝票を持たせ・・・・という怒涛のような午前中を過ごし、午後もリハビリが終わると毎日の患者さんの記録を残したあと、その結果を受けて医事課に送る日報、月報を作成して・・・・・。という日々を毎日おこなっていたら月の残業時間が60時間になりました。自分本来の業務も十分には取り組めず、ただ日々の疲労だけが蓄積されへとへとになりました。
 この残業時間数を受けて病院側も「たいへんなことになっている」と認識してくれて、やっと重い腰をあげて新たな事務職員を入れてくれることになりました。

 広告代理店の電通で過重な残業に耐えかねてうつ状態になり自殺する人が出てしまったために、政府も働きかたの改善に取り組み始めました。しかしその内容は「繁忙期は1か月の残業は100時間まで」というものです。
 産業界の「この程度の残業は当たり前」という圧力に屈したのでしょうが、逆に「100時間までは残業していいんだ。」というお墨付きを与えているようなもので、規制は骨抜きになってしまいます。
 この国では余暇の充実もワークシェアリングの拡充も夢のまた夢のようです。
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緩和ケア病棟でのリハビリ

 最近がん患者に対するリハビリが注目されています。
 職場に復帰できるように体力を回復させるための運動をおこなったり、動かないでいることが痛みを強くさせるので少しずつ身体を動かして痛みの軽減を図ろうとしたりしています。
 しかしながら最近の報道では、がん拠点病院でもきちんとリハビリを実施しているところは残念ながらまだ全体の24%程度のようです。その理由は保険診療の対象とならない、医療スタッフが不足している、などのようです。

 私は以前、緩和ケア病棟(ホスピス)のある病院に勤めていたことがあるのですが、当時がんのリハビリは緒に就いたばかりで、どのようにおこなっていくかは手探りの状態でした。
 私が初めて緩和ケア病棟のがん患者を担当したときのことです。
 初老の女性で、割とお元気そうに見えるので病室では楽しくおしゃべりをしながらふつうに身体を動かすようなことをしていました。
 主治医からは「あのかたはあと✖✖日だから。」と説明されていたのですが、こんなにお元気なのに本当にあと✖✖日なのかなあ、と疑問に感じていました。
 しかし医師が「予言」した数日前から徐々にお具合が悪くなられ、ほぼ予言通りに亡くなられました。このような病棟がありその病棟専門に担当している医師というのはそんなところまでわかるんだ、と驚かされました。今になって考えればもっと他におこなうべき運動があったのではないかと、考えさせられています。

 このような経験の積み重ねから、余命に応じた適切なリハビリの方法が今ではリハビリの世界全体で以前よりもわかってきています。
 新しい分野のリハビリがもっと認知され、もっと拡充されるようになってほしいものです。

昔のいいことば

 先日、勤務先の老人ホームで、一人のケアマネジャーからこんな話を聞きました。

 あるお宅でおじいちゃんが「孫がちっとも言うことをきいてくれない」と怒っていたが、孫のほうでは、「おじいちゃんがわけのわからない変なことばを話している。」と困っていたそうです。
 よく聞いてみるとおじいちゃんは孫に「えもんかけ取ってくれ。」と言ったのだそうです。
 「ハンガー取ってくれ」というのと同じ普通の感覚で言っているのに、孫がそんな簡単な頼みにも応じてくれない、と怒り出してしまったのです。
 孫のほうでは「えもんかけ」が「ハンガー」のことだとわからないから「おじいちゃんが変なことばを・・」となってしまったのです。

 この話を聞いた同じ日にその老人ホームの入居者の女性と、介護の専門学校から来ていた若い実習生の男の子とのやりとりを聞いていました。
 女性は友人から届いた手紙を読んでおり、実習生に「これを後で『状差し』に入れる。」と言っていました。そこで私がその実習生に「『状差し』って何のことだかわかった?」と横から口をはさんで聞いてみると、案の定「わかりません。」と答えてきたので、「壁にかけてある手紙入れだよ。」と教えてあげました。
 「えもんかけ」や「状差し」を理解できる私は、古い世代に属する人間に含まれてしまうようです。

 以前テレビで放送されていた下町の銭湯を舞台にした人気ドラマ「時間ですよ。」のシリーズの中に、時代設定を昭和の初期にした「時間ですよ。昭和元年」がありました。
 この中で女優樹木希林さんが演じていたおばあちゃんのセリフは昔使われていたことばがてんこもりで、食事1回分のことを「ごはんひとかたき」と話したとき、私には聞いたことのないことばでしたが、私の母は「確かに昔『ごはんひとかたき』って言ってた。なつかしんでいました。

 昔の日本のいいことばがどんどん失われていくのはとても残念です。
 今老人ホームにおられるお年寄りたちからそのようなことばが聞けるうちにいろいろと教わっておきたいものだと思います。

禁煙例外②

 今回の屋内全面禁煙に向けた動きの中で、「ホスピス(緩和ケア・終末期ケア)病棟の病室を例外にしてほしい」という動きがあります。

 以前私が勤めていた病院には禁煙外来がありました。禁煙外来がある病院はそうでない病院に比べ禁煙に関するより高い規定があり、敷地内禁煙が求められていました。
 数年前には、禁煙外来があるよその病院の職員が、敷地内の陰に隠れた場所で常習的に喫煙をしていることが表沙汰になり、問題になったことがことがありました。禁煙外来があると、職員も、そんなの個人の自由だろ、では済まされません
 私の勤めていた病院には緩和ケア病棟もありました。当時の院長は、「たばこを吸いたいという緩和ケア病棟の患者さんに、吸うな、とは言えない。」と言っていたのですが、規定を遵守せざるをえませんでした。

 今の私の勤務先の特別養護老人ホーム(特養)は、やはり敷地内禁煙です。たばこを吸いたいという高齢のかたもおられますが、ここではできない、とお伝えしています。
 20年くらい前に一時期関わった川崎市内の特養では喫煙希望者のために廊下の一部の区画を喫煙スペースにしていました。最近そちらに問い合わせてみると、神奈川県の禁煙条例に従って、そこでも今では敷地内全面禁煙にしているそうです。

 終末期の施設と高齢者の施設の違いはありますが、最期の希望を叶えてあげるために、ホスピスでの喫煙を容認してよいのかどうか、私には答えが出せません。

禁煙例外①

 前回、病院への高額寄付者であることを笠に着て院内での喫煙をごり押ししようとした男性の話を載せましたが、お金がある人や社会的に影響力がある人が喫煙して自分がすかっとして気持ちがよかったりいらいらが落ち着いたりするものだから、喫煙は有用で必要(有益?)なものだとして、世の中に喫煙の制限が掛かろうとする動きを妨害します。
 今も副総理兼財務大臣が「そんな害があるの?」と言ってみたり、「神奈川県は禁煙条例があるから神奈川の仕事はしたくない」と言う芸人もいます。
 かつてたばこを愛し、必要なものだと自慢していて病気になり早く亡くなってしまった人の中には、皇族のかたも橋本龍太郎元総理もおられます。

 2019年のラグビーワールドカップ大会や2020年の東京オリンピックに向けて、世界に対して遅れている街中での受動喫煙の被害をなくすための対策を世界水準にしようと、政府が動きだしているのに対し、小規模の飲食店などが喫煙を規制されては商売が成り立たないと反発し、規模によって例外を認めさせようという動きが出てきています。
 上記の芸人は「食事は最後のたばこの一服まで含めてが食事なんだ。」ということをテレビで話していました。
 彼らにとっては喫煙のできない場所は食事できる場所にならないと思ってしまうようですが、この人たちは自らだけでなく他人の健康をも脅かしているという考えになぜ思い至らないのでしょう。大気汚染が激しい中国の上海ですら、小規模のバーをも含むすべての屋内での禁煙を今月(2017年3月)から始めているそうです。
 世界水準以下の情けない国民です。

因業じじい

 今から20年近く前の話です。
 私が以前勤めていた病院を経営する法人組織に多額の寄付をしている男性がいました。
 法人組織への貢献が顕著だったかたに法人から授与される徽章を胸につけ自慢しています。
 病院に来院すると毎回院長室に押しかけ、「よぉ」などと片手をあげながら院長に声をかけ、どんどん入室してきてソファーに座り、全館禁煙となっている病院の建物の中でも俺が吸うんだからここだけは例外、と言わんばかりに喫煙をしていたようです。無理やりソファーに向かい合わせになって相手をさせられた院長も迷惑していたに違いありません。

 そんな男性の奥様がご病気になり、リハビリへの通院が必要になりました。
 リハビリテーション室の中で夫人のリハビリがおこなわれているあいだ、リハビリのスタッフに対し、胸につけたあの徽章がよく見えるようにわざわざ手でちらつかせながらいろいろ要求してきます。「なんて嫌味なおやじだ」と思いました。
 あるとき受付の女性に対し、「その中(スタッフルーム)に入ってたばこを吸ってもいいか。」と要求してきたそうです。
 当時受付をしていた気の強い受付嬢は「お断りいたします。」と毅然と突っぱねたそうです。恐れを知らぬ態度ということになるのかもしれませんが当然取るべき対応で、ありがたいことです。

 通院のために夫人を病院に運ぶのを依頼していた介護ボランティアのタクシーの到着が予定時刻を遅れると、「他のやつを後回しにして先にこっちへ来い。」などと強迫的に怒鳴り散らしていたようです。
 金銭の報酬を受けないボランティアの人に対してですら、そのように言う人です。もしかしたら喫煙を断られたあと院長室へ行って「あのリハビリの受付の女は生意気だ。ほかのやつに代えろ。」などと息巻いていたかもしれません。

 たまたま私が担当していた患者さんで、家が近いためにその男性を以前から知っていた人がいました。その人はあの男性のことを「昔から因業(いんごう)なんだ。」と表現しました。
 私がそれより以前に見た宝塚の芝居のセリフの中で、お女郎さんに身を落とした女性が、どこまでも欲の深い女郎屋の女将に対して「因業ばばあ」と叫ぶ場面がありました。
 その場面をよく覚えていたので、その意味がピンときました。

 本当に「因業じじい」がいたものです。

小学生の中にただ1人

 私は大学生のとき、商工会議所の珠算3級の試験を受けました。
 以前ここでも書いたことなのですが、このとき私以外の受験生はすべて小学生でした。教室にいる大人は私と、私とあまり年齢の変わらない女性の試験官だけという状況で、極度に緊張してしまったため、3級の試験に1度落ちてしまいました。

 先日テレビで、ブラジルから来日したサッカーのアマラオ選手は、日本語を覚えるため、公文式の国語で勉強したが、子供たちにまざって大人はアマラオさん1人という状態だったため、恥ずかしかったりとても緊張した、と話していました。

 私は上記の経験があったので、アマラオさんがどれほど緊張されたかよくわかる気がしました。
 そのような努力を続けられたアマラオさんは、今は流ちょうな日本語を操れるようになり、日本でサッカーの指導者にまでなっておられます。
 彼を見習って英語の勉強をしてみたいものです。

横向きを作る

 高齢のかたからベッドから起きあがる動作がしづらくなったがどうしたらよいか、と相談を受けることがあります。
 病院で長患いをして全身の筋力が落ち、起き上がりがうまくできない場合も同様です。

 どのようにして起きあがっているかやってもらうと、仰向けの姿勢から真っ直ぐ前に身体を起こして起きあがろうとしている場合が多くあります。
 このようなとき理学療法士は、まず「横向きを作ってください。」と指導します。
 具体的には
①仰向けに寝ている姿勢から両膝を曲げて膝を立てる。
②立てた両膝を右、または左に倒して横向きに寝る。
③横向きで膝から下の足先をベッドの外に出して下に垂らす。
④手はベッド柵か何かに掴まるか手のひらでベッドを押す姿勢にする。
⑤掴んだ手の力または手のひらでベッドを押す力で頭を持ち上げ、下になっている肘の真上まで頭をもってくる。
⑥頭が肘の上まできたら、さらに手のひらでベッドを押す力でベッドに腰掛ける姿勢までもって行く。
という手順になります。

 数日この指導を繰り返し何回かかけて覚えてもらおうとするのですが、手でベッドを押す力も非常に弱くて力が足りない場合や、起きあがるときは真っ直ぐだと身体にたたき込んでしまっているかた、完全に横向きになることに恐怖感や抵抗感があるかたなど、起きあがるのに必要な力を十分に発揮できない場合には、横向きが半分上を向いた仰向けに近い姿勢になってしまい、起き上がる途中から後ろに倒れて仰向けに戻ったりして、習得になかなか難渋します。
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